2019年アカデミー脚色賞を受賞した映画「ブラッククランンズマン」
製作陣にはゲットアウトのジョーダン・ピール監督、セッションのジェイソン・ブラムが加わっています。
本作は黒人を差別する白人主義団体KKKに、黒人警察官と白人警察官が潜入するというクライムサスペンス映画です。しかしただのサスペンス映画に収まらず、黒人差別がどういうものかをリアルに描いており、ショッキングな内容になっています。
面白いというより、差別の歴史や現状を知るために見なければならない映画と言った感じで、けっこう見る人を選ぶ作品です。でも少しでも気になっている方は見た方がいいでしょう。
ということで、このページでは映画「ブラッククランンズマン」のあらすじ、ネタバレ感想について紹介します。
ブラッククランンズマンの作品情報
タイトル | ブラック・クランズマン |
上映時間 | 135分 |
公開年 | 2019 年 |
製作国 | アメリカ |
オススメ度 | ★★★★☆ |
ブラッククランンズマンのあらすじ
1979年コロラド州コロラドスプリングスの警察署で初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース。
署内の白人刑事たちからカエル(=黒人)と馬鹿にされながらも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていたKKKのメンバー募集に電話をかける。
そして黒人差別発言を繰り返して入団の面接にまで漕ぎ着ける。しかし黒人であるロンはKKKと対面できないため、同僚の白人刑事フリップに協力してもらうことに。
電話はロン、対面はフリップが担当して2人で1人の人物を演じながら、KKKの潜入捜査を進めていく。
ブラッククランンズマンのラスト
潜入捜査に成功したロンとフリップは、KKKが爆弾を使って集会に集まった黒人たちを爆破する計画に気づく。
計画は失敗し、ロンとフリップは見事KKKの悪事を暴くことに成功した。
しかし黒人差別がなくなったわけではない。
ラスト、現実世界で実際に起こったデモのニュース映像が流れる。差別をする人々は、今も世界中に存在し、事故の優位性を誇示する為差別を続けている…。
ブラッククランンズマンの感想
これまで黒人差別を描いた映画は色々見てきました。
女性であり黒人でもあるNASAのメンバーが宇宙開発に挑む「ドリーム」。黒人だからと罪を着せられ、世界的に大ニュースとなった「ザハリケーン」。そしてアカデミー賞を受賞した「グリーンブック」。ドキュメンタリーでいうとネットフリックスの「クィアアイ」が有名ですね。
どの作品も面白く、社会的なメッセージが込められています。でもエンタメ映画の域を出ないと、そう思っていました。実際は映画自体がエンタメ寄りなのではなく、私自身がそう決めつけていたんですね。
本作ブラッククランンズマンは、白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査をしたノンフィクション小説が元になっています。つまり実話なんです。
サスペンス調ですすむストーリーはドキドキしますし、演出も独特で面白い。でもそれ以上に「黒人差別」について描いています。ただのサスペンスが面白いエンタメ映画ではないんです。だから鑑賞後は非常にショックを受けて、面白いという感情以上に、怒りや悲しみがこみあげてきました。
過去の黒人差別と現在の差別
劇中、老齢の黒人男性がある過去について語ってくれます。黒人のスローな少年(今でいう知的障害)が、白人女性をレイプしたとして警察に捕まり、6分の裁判で有罪になり、民衆になぶり殺しにされたというのです。
これは実際にあった事件で、ジェシー・ワシントンリンチ事件と調べれば詳細が出てきます。ショッキングな画像は映画でも使用されています。
詳細は省きますが、焼き殺された黒人少年の遺体は記念品として売られ、死体画像は絵ハガキにもなったそうです。こんな事を人間がしていたのかと思うと、唖然としますね。
黒人であるだけで、犬のように扱われるのです。でもこんな酷い差別は今はもうない、ありえないと思うでしょう??悲しいことにそうではないんです。
武器を持たない黒人を射殺したとして白人警官が非難されたニュースは記憶に新しいことでしょう。さらにそれだけでなく、日常レベルの差別は多いです。
私は黒人ではありませんが、しかし女性だからという理由で差別を受けた経験はあります。小さな差別は日常に潜んでいます。劇中では、女性黒人活動家のパトリスが白人警官のセクハラに合っていましたね。あそこで抵抗していたら射殺され、正当な理由としてなんのお咎めもなかったでしょう。
黒人だから何をやってもオッケーだと扱ったり、黒人の文化を笑いものにしたり、女性をモノののように扱ったり。そんな日常は当たり前のように、私たちを取り巻いています。
でも決して些細な事ではないんです。たかがセクハラ、ちょっと馬鹿にしただけでしょうと思うかもしれませんが、確実にその人の心は蝕まれています。小さいけれど確かに存在する差別を経験したことがある人は、ブラッククランズマンに思うところがあるでしょう。
声を上げて抵抗しても聞き入れてもらえない、そんな現実がありありと描かれており、映画に対してではなく現実世界に対してめちゃくちゃムカつきました。
映画で流れたデモのニュース
そして同時に悲しくもありました。それは映画の最後で流れたニュース映像について思うところがあったからです。
デモの参列者に突っ込む車。このショッキングな映像を当時見ていた私は、かなり心を痛めました。でもいつの間にか忘れてしまって、映画を見るまで思い出すこともなかったんです。忘れて風化させてしまったことに、衝撃を受けました。どうしてこの映像を忘れてしまったんだろうって。
3.11の災害や同時多発テロ、ボストンのマラソンテロなど世界には悲しいことが多すぎて、すべての事件事故を覚えて、かつ時々悼むのは難しいことでしょう。それでも、なぜこんな事件が起こってしまったのか、どうすれば差別を少しでも無くせるのか考えるためにも、過去の悲劇を忘れてはいけないんです。
それなのに忘れてしまったことに悲しくなって、なんだか自分を責めたくなりました。もちろん自分を責めても何かが解決するわけではないません。全部自己満足です。
差別にNOを言う人は勇気を与えている
差別主義者をどうこうするのは大変難しい話です。差別をまるで信仰のように行いますし、差別する自分(他社より優位な自分)をアイデンティティにしていますから。
それでも人権のために世間と闘う人たちがいて、その人たちに励まされている自分がいます。最近だとドイツのアジア人女性差別CMで、声をあげてNOを言ってくれる人たちがいます。
劇中の活動家パトリスも、世界を急に変えることはできないでしょうけど、声をあげることによって救われる人もいたと思うんです。だから声を上げることは大切なことなんですね。デモなんかして何か変わるの?と思う人もいるでしょうけど、変わるんですよ。
本作は主に黒人差別について語っていますが、差別という観点から女性差別についても述べました。2つは全然違う、交えて話すものではないと思いますか?どの差別がより悲惨かという話ではありません。本質の話です。差別は今も、そして日本でも、どこでも起こっています。
差別があると知っている人は嫌というほど知っているでしょうけど、本作を見てもピンと来ないという人がいるようなので色々と語りました。ぜひこの映画をエンタメ映画で終わらせないでください。
キャスト
監督 | スパイク・リー |
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脚本 | スパイク・リー |
俳優 | ジョン・デビッド・ワシントン |
アダム・ドライバー | |
ローラ・ハリアー | |
トファー・グレイス | |
ヤスペル・ペーコネン |
アダムとジョンの、黒人英語と白人英語について語るシーンが好きです。大学の英語学の授業でちょっと習ったのですが、地域や文化レベルによって色んな英語があるというのは面白いです。
まとめ
映画ブラッククランズマンについて紹介しました。本作をエンタメ映画にしたくなかったので色々と考えましたが、色々考えすぎて人生が辛くなりました。
でも必要なことだと思います。
最高に楽しめる差別映画を紹介します。どれも面白いので、胸を張って色んな人にオススメできる作品です。