公開:2001年 上映時間:89分
アマゾンプライムビデオでは、しんちゃんの映画が全て見れます! という訳で、久しぶりに映画「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」を視聴しました。
時間も短くてさくっと見れますが…。
いやー。泣けます。泣けますよ、これは。
明日もまた生きていこう、と思えるアニメ映画です。
小中高校、そして大学生、それぞれの年代で一度ずつ見たので、むかしを振り返りながら感想を書こうと思います!
オトナ帝国のあらすじ
春日部に誕生した“20世紀博”。そこはひろしやみさえたちが育った70年代のテレビ番組や映画、そして暮らしなどを再現した懐かしい世界にひたれるテーマ・パークだった。大人たちは子供そっちのけで“20世紀博”に熱中していくのだったが……。
簡単に言えば、「大人たちが、大人のための遊園地にのめりこんで、子供たちを見捨てる。その中で家族愛を思い出す」です。
文にするとすごく怖い…。というか、本作には「異様な不気味さ」「怖さ」が終始漂っている。この昭和チックな雰囲気や、親にかまってもらえない描写が子供のころはすっごく怖かった。いつも見ていたドラえもんやアンパンマンとは全然違う色の映画だったから。
いま、大人になって見てみると、やっぱりちょっと怖いけれど、それでも心に響くものがあるんですよね。
まずは物語の流れを細かく、感想を交えて書きたいと思います。
始まり~20世紀博~
大人向けテーマパーク「20世紀博」。
父ヒロシは戦隊シリーズの体験イベントにのめりこみ、母ミサエは魔女っ子のコスプレをして、魔法少女になりきる。しんちゃんとひまわりは、20世紀博内の託児所に預けられる。
託児所には多くの子供が、親の遊びが終わるのを待っている。
託児所での姿はまあ、スーパーなんかでもよく見ると思います。
でもしんちゃんたちは20世紀博が嫌いです。スーパーでちょっと親を待っているのとはわけが違います。
「いつも二人だけで遊んで!たまには違う所に行きたい!」と主張してもヒロシ、ミサエは耳を貸さない。
その時点で怖いです。
さらに怖いシーンがやってきます。
洗脳される大人たち
夜テレビを付けると、20世紀博からのメッセージが流れます。
「明日お迎えに行きます。愉快に過ごしましょう」それだけ。
しんちゃんはなんじゃこりゃ?って感じです。でもメッセージを聞いたヒロシとミサエがふらりと立ち上がるのです。
その顔には表情もなく、声にも抑揚がありません。
二人はご飯も作らず、毛布を被って寝てしまいます。
こわーーーーい! テレビのメッセージが大人たちの脳のスイッチをオフにしてしまったのです。洗脳?催眠術?
朝になると、ヒロシとミサエはお菓子を食い漁りダラダラ過ごします。
しんちゃんは会社に行かなくていいのか心配します。
でも「大人は会社に行かないと行けないのか?国会で青島幸男が決めたのか?」と言い出す始末。青島幸男。今の子供たちが見るとダレ??ってなりそうですね。
さらにヒロシはしんちゃんに言います。「どこへでも行っちまえ」。
子供に言っちゃいけない言葉ランキング5位に入るやつ!!
ミサエも「もう帰ってこなくていいわよ」とか言うし。
しんちゃんはひまわりを連れて幼稚園に行きますが、そこでは園長先生たちが、かんけりをして遊んでいるのです。しかも大人たちが子供を見る目といったら!まるで敵を見るかのようです。
そして大人たちは、やって来た20世紀博のトラックに自ら乗り込みます。
しんちゃんは「どこに行くの、父ちゃん母ちゃん!」と叫びながらトラックに乗ったヒロシ、ミサエを追いかけますが、トラックはぐいぐい進むのでした…。
親に見捨てられるって、子供にとってこんな残酷な事は無いですよ。
無法地帯、春日部
しんちゃんはカザマ君たちと合流しますが、空腹からコンビニに行きます。でも年長組のいかにも悪ガキっぽい奴らが食料を占領しているのです。
無法地帯、弱肉強食。両親の庇護を失った子供たちは、ただただ無力でしかないのです。
その夜、またトラックがやってきます。
「子供たちおいでー。パパママに会えるよー。来ないなら翌朝、捕まえるからねー」とか言っちゃいます。
しんちゃんたちは賢いので「罠」だと気づきトラックには乗りません。
そしてトラックに乗った子供たちは、パパママに会えないどころか、教育して昭和の匂いに染められるのでした…。それってやっぱり洗脳…。
子供狩り
翌朝、20世紀のスタッフとヒロシミサエが子供狩りにやってきます。
しんちゃんたちは幼稚園のバスを運転し、どうにか逃げます。
バスを運転するのです。なんてたくましい幼稚園児。大型のバスを運転するなんて、普通免許のキシマには到底無理です。
そこで繰り広げられるカーチェイスは見ものですよ!
まるで子供向けルパン三世みたい!
一番笑えるシーンかもしれません。この後泣けるシーンがあるので、今のうちにたくさん笑っておきましょう。
家族を思い出す~名場面~
しんちゃんたちはこのままではらちがあかない、20世紀博に向かおう!大人たちを連れ戻そう!と本拠地に乗り込みます。
20世紀博の中で、しんちゃんはヒロシに会います。
しかし「父ちゃん!」と呼びかけても、ヒロシは「だれ?」と返します。
ヒロシは自分が子供だと思っているのです。
そこでしんちゃんはヒロシの靴をもぎ取り、匂いを嗅がせるのです。
そしてヒロシは思い出します。
ミサエとの出会い。しんのすけが生まれた時の事。マイホーム建設。夏の日の営業。つらい残業。でも家に帰ると、子供たちが笑顔で迎えてくれる。
そんな日常を思い出すのです。
ヒロシは自分の存在を噛みしめ、泣きながら、しんちゃんを抱きしめるのでした。
このシーンは、しんちゃんの映画史上最も泣ける名シーンではないでしょうか。
父親の頑張り、そして子供たちの笑顔、家庭。セリフのないシーンですが、だからこそ多くの観客の心に響くんだと思います。
親がいて、思い出があって、いつか自分も親になって…。
心を震わせるシーンです。この名場面の為に、本作をレンタルしてもいいと思います。
ボスとの対決
昭和の匂いで大人たちに暗示をかけていた、首謀者ケンと恋人のチャコ。
見た目がビートルズのジョン・レノンっぽいのがまた時代を表しています。
ケンの目的は世界を昭和の匂いで見たし、21世紀を消すこと。そのために、東京タワーに蓄えた昭和の匂いを世界にばらまくというのです。
懐かしい匂いに頭がおかしくなりそうな中、野原一家は東京タワーの最上部を目指します。追いかけてくる敵を足止めするヒロシ。
尻でやっつけるミサエ。タックルで倒すシロ。
もう家族のことを忘れたくない、そんな強い意志が、敵を倒す力になるのです。しんちゃんは何度転んでも、鼻血が出てもあきらません。
そしてついにボロボロになりながらも、東京タワーの最上部にたどり着くのでした。しんちゃんは言います。「父ちゃん、母ちゃん、ひまわり、シロと一緒がいい。喧嘩しても一緒がいい」。未来は誰にも奪われない。
その思いがまた、洗脳にかかった大人たちを正気に戻します。
子供アニメで自殺シーン?
目的を達成できなかったケンとチャコは、東京タワーから身をなげようとします。
子供向けアニメだぞ!しんちゃんだぞ!
まあ、結局は未遂で終わるんですけどね。
最後にケンとチャコは今を生きると決めて、野原一家は家に帰るのでした…。
ケンとチャコは悪党か?
私はケンとチャコは悪党ではないと思います。確かに二人は、大人たちを洗脳し、昭和の世界を再現したいという野望がありました。
でも家族を否定しているわけでは無いんです。
しんちゃんたちを捕らえることもできたのに、そうはせず、自分のアパートに招きます。紅茶まで出しちゃいます。
一概に悪いヤツとは言えないでしょう。
しんちゃんたちに気持ちがあるように、ケン達にも思想があったのです。劇中で、チャコとケンは「外の人たちは物で埋め合わせをしている」「金ばかり」と現代の資本主義を否定するようなことを言います。
人の心を忘れて、金儲けに走る人たちとは相いれないと言っているんですね。
そして現代と相いれない2人は飛び降り自殺をしようとします。しかし自殺は阻止されます。
平成に馴染めなかった2人はその後、どうして生きていくのでしょうか?平成の世にも、野原一家みたいに金儲けではなく家族を愛して生きる人たちがいることは、彼らの希望になるのでしょうか。
トラックに揺られ春日部に戻る中、ヒロシは言います。
「さあな。でもどっかで生きてくだろ」と。私もヒロシに同感です。あの2人はもう、自殺することはないでしょう。新しい時代に思うことはあっても、どうにか生きていくだろうと。エンディングでさらっと流れる吉田拓郎の歌みたいに。
分かりやすく「善と悪との闘い」ではないところが、本作の魅力のひとつですね。
素晴らしいキャスト
「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の監督は原恵一です。「河童のクゥと夏休み」、「カラフル」そしてしんちゃん映画でオトナ帝国と同じくらい名作とされる「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」の監督でもあります。
原監督は、とにかくすごいですよ。大人心をくすぐる術を理解しています。それを子供向けアニメでやってのけるのです。
ドラえもんの映画に環境や災害のテーマを混ぜ込んだ芝山努監督みたい!
と思って調べてみたら、絵コンテ芝山努じゃないですか!!
しかもどうやら原監督は芝山努監督の作風に絶大な影響を受けているとか。納得です。
子供の頃は、本作のテーマや言わんとすることが理解できませんでしたが、大人になって見ると、分かる部分が多いです。
家族の笑顔が力になる事とか。
だからこそ本作は大人にこそ見て欲しいのです!
ケンの声を担当した津嘉山正種さんも、渋くてかっこいいです。
豆知識
・しんのすけ役の矢島晶子は2005年の原恵一との対談で本作を劇場版の中で「一番好き」であると断言しており、本作および次回作である『戦国大合戦』の2作は別格で、「これからどうなるかわからないですけど、今のところ、あの2本を超えるのはかなり難しいだろうと思う」と語っている。
まとめ
いつか自分が親になった、また見よう…。そしてひろし役の藤原啓治さん、今までありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。
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