原題:ARRIVAL 公開:2016年 上映時間:116分
前々から見たかったSF映画。
SFと言語学を絡めるという発想が素晴らしいです
宇宙からやってきた物体が、おかしのばかうけに似ていると話題にもなりましたよね!
ということでこのページでは映画メッセージのあらすじ、感想、劇中で出てくる言葉について紹介します
メッセージのあらすじ
巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。中国、アメリカ、日本、インド…。
世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズは宇宙船に乗ってきた者たちの音を解読するよう軍から依頼される。
ルイーズは同じく軍から音の解読を依頼された男性イアンと共に宇宙船へと乗り込む。船内に酸素はあるが重力は地球とは違う。
壁一枚隔てた向こう側にはタコのような宇宙人が2体。
奇妙な音を出している。
ルイーズは言葉ではなく文字でやりとりをしようと考え、紙に自分の名前を書いて個人を認識してもらおうとした。
結果は大成功。宇宙人は墨のような液体で象形文字を作った。
宇宙人ヘプタポッドの目的は?
ルイーズとイアンは何か月もかけて宇宙人と会話することで、宇宙人の言語を習得していく。そこでルイーズは軍が本当に聞きたい事、地球に来た目的を問う。
すると宇宙人は「武器を授けに来た」と答える。
この答えに軍はパニック!
武器とはなんだ。他の国にも武器を与える気か。
人間に殺し合いをさせる気か。
ルイーズは更なる調査が必要だと考えるが、軍は了承しない。そんな折、中国のシャン上将が宇宙船を攻撃すると世界に発表した。
変な夢を見るルイーズ
宇宙人たちと関わるにつれて、ルイーズは変な夢を見るようになった。
小さな女の子が自分をママと呼ぶ夢だ。
その夢はリアルで、しかも女の子は病気で死んでしまう。
なぜこんな夢を見るのだろうか。
戸惑うルイーズだが、されにロシア軍も宇宙船を攻撃すると発表した。アメリカ軍も事態に対応するために宇宙人研究から手を引くことに。
撤退を始めるが、ルイーズはひとり宇宙船へと向かい宇宙人と対話をする。
宇宙人はそこで「武器=言語」であると明かす。
ルイーズはさらに宇宙人は3000年後の未来から来たということ、その3000年後地球人が宇宙人を助けるという事を知る。
しかし地球には戦争や貧困が蔓延している。
このままでは3000年経つ前に地球は滅びてしまう。
だから宇宙人は地球を助けるために来た。
地球人が一つの共通言語を持つことで一体となり、争いがなくなるだろうと考えていたのだ。
明かされる真実
彼女はそこでフラッシュバックに合う。まるで夢をみているように。
ルイーズは国のトップが集まる会合に来ていた。そこでシャン上将に「君のおかげだ」と言われる。何のことか分からないルイーズ。
戸惑う彼女をよそにシャンは言う。
「君が私に電話をして戦争を思い留まらせてくれた。亡き妻の言葉を言って…」
シャン上将は妻の言葉をルイーズにささやいて、自分の携帯番号を見せた。
「これを今、見たいそうだね」
フラッシュバックが終わり現実に戻ったルイーズ。夢に見ていたことが未来の出来事だと知って、急いでジャン上将に電話をする。
すると中国は宇宙船への攻撃を中止すると発表した。
ルイーズは未来を知ったことで行動し、結果未来を変えることに成功したのだ。
ラスト
宇宙船は目的が果たされたと知り、姿を消す。
ルイーズは夢のことを思い出す。
将来自分には娘ができるが、死んでしまう。その死ぬと言う事実を悲観することで夫とも離婚する。
だが未来を変えることもできる。
ルイーズは研究を共にしてきた科学者のイアンを見つめた。
自分は彼と結婚し子供をもうける、それを知っていてどう行動すべきか。
最後、ルイーズは イアンと抱きあう。
将来生まれる娘が死ぬとしても、最後の外の時まで一緒に過ごしてあげようと心に決めて…。
メッセージの感想
時系列がごちゃっとした映画のあらすじをまとめるのは難しいですね。
分かりやすくするために改変している箇所もありますが、おおむね内容に沿っているはずです。
ルイーズはずっと未来を見ていたんですね。
それが分かったとき「ああ、そうか!!!」とパズルのピースがはまり興奮しました。そういうことだったのか、と。
未来を知って現在を変えて、結果未来も変えてしまう。ドラえもんでありそうな内容ですよね。あとはバタフライエフェクトという映画にも似ています。
タイムトラベル系の映画に付きものなストーリーですが、映画メッセージはタイムトラベル系ではありません。
だからこそ面白かった。
テーマはやはり「言語」ですかね。
人間が言語と言う共通認識を持つことでまとまっていく。
最近大学で言語学を学んでいるのでとても興味深いストーリーだと感じました。
言語って本当に面白いです。コミュニケーションも言語なくして成しえないと思います。
だからルイーズは宇宙人と文字でやり取りすることで言語を学び、コミュニケーションを可能にしたのではないでしょうか。
サピア=ウォーフの仮説と非ゼロ和
ちなみに劇中に出る「サピア=ウォーフの仮説」とは、言語が思考を決定するという概念のことです。
思考が言語を作るのではなく、言語が考え方を決める。
例えば、サピア=ウオーフは自身の経験から、言語によって人間 の行動が影響を受けるということに気づいた。
「ガソリン缶」と呼ば れているものの貯蔵所の近くでは、十分な注意が払われるのに対して、 「空のガソリン缶」と呼ばれるものの貯蔵所の近くでは、喫煙を差し 控えることも行われないし、煙草の吸殻を投げ捨てたりして、不注意 だ。
ところが、「空の」缶は、起爆性の気体を含んでいるので、 一番危険なのである。
「空の」という表現が「何もない」という意味 に解釈され、「ガソリンは入ってない」「だから安全だ」とい う判断につながり、不注意な行動をしてしまうという。
このように、言語表現が人間の思考を決め、行動に影響を及ぼしているわけだ。
参考:江村, 裕文 サピア=ウォーフの仮説について―文化その3―
言葉の力はすごいとよく言いますよね。これは上記と関係あるような気がします。
映画メッセージは他の視点からも見ることができます。
娘が死ぬという事実は変わらなくても、そこに至る過程は変えることができる。
どんな人生を選ぶかは自分次第、とか。
SF×言語の要素が強いですが、未来は変えられるんだぜ!というメッセージを感じたい人にもおすすめできそうな映画です。
武器=言語、夢に見ていたのは未来。
この気づきにはっとした時はアドレナリン最高潮でした。
その点はすごく面白かったです!
あ、最後に劇中で登場した「非ゼロ和」についても少し説明します。
非ゼロ和とは、複数の人が相互に影響しあう状況の中で、ある1人の利益が、必ずしも他の誰かの損失にならないことをいいます。
例えば恋愛もそうです。恋愛は一方が傷つけばもう一方が満足するわけではありませんよね。勝ち負けが対になっているわけじゃない。
この概念について気になる人は以下のリンクに載っているので読んでみてください。メッセージの解釈もなされています!
キャスト(声優)
ルイーズ・バンクス – エイミー・アダムス(中村千絵)
イアン・ドネリー – ジェレミー・レナー(加瀬康之)
ウェバー大佐 – フォレスト・ウィテカー(立木文彦)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
まとめ
インターステラーのように物理学や科学の見地から宇宙を解釈するのもいいけれど、言語学をぶつけるのもいいなあ。
思っていたよりとっつきやすく、目の離せない映画でした!